小説①(私のpixivより)

戻れない夢、変えられない現実。

 

桜舞う春の日。
暖かな日差しが差し込む、綺麗な日。
君は死んだ。

桜の木の下、穏やかな表情の君。
眠るように、静かに死んだ。
もう一度、私の名前を呼んでくれたら。
もう本当に何もいらないのに。
傍に転がる瓶が、現実をつきつける。

大好きだった彼女。
どうして。
どうして何も言わずに消えてしまうの?
陽菜は何時も、私の前から消えていく。
そしてまた、私は神様に会いに行くんだ。

静かな森の中を、1歩ずつ歩む。
いつもの鳥居が見えてくる。


「神様。どうか時間を戻して。」

今度は何を渡せばいいんだろう。
大事なものと引き換えに時を戻す。
このまま繰り返せば、いつかは命と引き換えるのだろう。だけど、これでいい。
陽菜より大切なものなんて何も無い。


陽菜を失った現実。
目を逸らしてまたひとつ、大事なものを失った。
どんなに後悔しても、行き着く先はいつも同じ。
同じ映画を見ているだけなのだから当然だ。
変えられないのなら、進むしかない。
知りながらも、残された側からすれば
そんなの無理だ。だって、好きだった。

あの、大人気小説の主人公のように。
前を向いて進むなんてできない。
私は強くなれない。ただひたすらに、
後悔の念を綴るだけ。残された側なんて、きっと
そんなものだ。

ごめんなさい。私がもっと、しっかりしていれば。
無理にでも話を聞いていれば。愛を伝えていたら。
こうはならなかったのかな。いっそのこと出会わなければ良かった。相談してくれれば。何でもいいから、とにかく生きてて欲しかった。陽菜の生きる意味なんて
どうでもいい。生きる価値がなくても、生きる権利がなくても死なないで欲しかった。たとえ犯罪者でも別に良かった。そんなわけないけど。一晩中でも、徹夜で話聞いたのに。いつでも会いに行くのに。ごめんなさい。そのくらい大好きだったのに。

なんて。終わらない後悔に、終止符を打つ。
桜の木の下。君の隣。
もう温かくない手を握って。

二人が眠る、その木の下。
いつかの、タイムカプセルが埋まっていた。

 

 

「雨乃、おはよう!」
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